1個じゃなくて1匹
近所に老舗のたい焼き屋さんがあり、前を通るといつもおいしそうな香ばしい匂いがする。 いつもは予約が必要らしいのだけど、たまたま飛び入りで買えるタイミングだったので1個くださいとお願いすると女将に1匹ね、と言い直された。多少の圧を感じ不思議に思うも、たい焼きはとてもおいしかった。
友人にそのお店の話をすると、どうも定番のやりとりらしい。あのお店ではたい焼きは1匹2匹と数えるそうで、1個と言うと言い直されるのだと。
そして今日たまたま通りかかると、あのいい香りと共に飛び入りで買える看板が。 待ってましたとばかりに入店し、一番近かった親父さんと目が合い、こんにちはとご挨拶。
「何個にする?」
完全に意表を突かれた。そこは何匹じゃないの、と。 親父さんを訂正するようで申し訳ない気持ちを押し殺しながら、「1匹ください」と自信なさげに伝える。
奥に行き、女将から二百円と引き換えに「はい1匹ね」とアツアツのたい焼きを受け取る。 貴方わかってるわね、と伝わってくる女将の目に安堵しつつ、私は思った。
どっちでもいいんだな。